
近年、自費出版のハードルは大きく下がり、個人での書籍制作・流通が一般化してきました。小説やエッセイ、自分史や専門書など、自らのコンテンツを形にする手段として、自費出版は魅力的な選択肢です。しかし、書籍としての信頼性や流通の円滑化を図るうえで、欠かせない要素の一つが「ISBNコード(国際標準図書番号)」の取得です。
本記事では、ISBNコードとは何か、なぜ自費出版において重要なのか、どのように取得できるのか、そしてその費用や注意点について、専門的かつ実践的な観点から詳しく解説します。
目次
ISBNコードとは何か
ISBN(International Standard Book Number)は、書籍ごとに付与される13桁の識別番号で、出版物を一意に識別するために国際的に利用されています。ISBNコードは、以下のような構成要素から成り立っています。
- 接頭記号(Prefix):通常は「978」または「979」で始まる。
- グループ記号(Group Identifier):出版国または言語圏を表す数字(例:日本は「4」)。
- 出版者記号(Publisher Identifier):出版社や出版者の識別子。
- 書名記号(Title Identifier):その出版社が出版する書籍の個別識別子。
- チェックデジット(Check Digit):誤りを検出するための数字。
このコードは書店、図書館、取次業者などの書籍流通システムにおいて、書籍の管理や検索、販売を効率化するために用いられます。
自費出版にISBNコードは必要か?
自費出版において、ISBNコードの取得は法的義務ではありません。
しかし、次のようなケースでは、ISBNコードの取得が強く推奨されます。
- 書店流通を希望する場合(オンライン・実店舗問わず)
- Amazonなどの大手ECサイトでの販売を計画している場合
- 国立国会図書館など公的機関への納本を想定している場合
- 複数の書籍をシリーズ化する予定がある場合
- 自著の信頼性・正式な出版物としての体裁を重視する場合
一方で、同人誌や私的な配布、展示会・イベントでの頒布など、限定的な用途であればISBNコードの取得は必須ではありません。
▶︎関連記事:Kindleで自費出版をやってみた。プロの目線で徹底解説します。
ISBNコードの取得方法
ISBNコードは、原則として出版者単位で取得します。自費出版を行う個人がISBNを取得する方法は、大きく分けて以下の2通りです。
1. 個人で日本図書コード管理センターに申請する
日本国内におけるISBNの管理は、「日本図書コード管理センター(一般社団法人 日本出版インフラセンター)」が担っています。個人で出版者として登録することにより、ISBNの付与を受けることが可能です。
必要な手続きの概要
- 出版者登録の申請:個人でも「出版者」として登録可能。登記や法人化は不要。
- 必要書類の提出:出版予定書籍の概要、身分証、著作権に関する確認書類など。
- 登録料・ISBN付番料の支払い:後述の費用参照。
- 登録完了後、ISBNの付与を受ける:1冊ごとにISBNを申請。
この方法は、出版計画が継続的にある場合や、複数冊を長期にわたって発行する予定がある方に適しています。
2. 出版支援サービスや自費出版企業に依頼する
個人での申請に不安がある場合は、ISBNの取得から書籍制作・流通までを代行する自費出版サービス業者を利用することも可能です。
多くの業者は、すでにISBNコードを取得可能な「出版者」として登録されており、著者に代わってISBNを取得・登録してくれます。
メリット
- 手間や書類作成の負担を軽減できる
- 表紙へのバーコード印刷なども一括対応してくれる
- 国立国会図書館への納本も含まれる場合が多い
一方で、自身の名義でISBNを管理したい場合には向いていません。
ISBN取得にかかる費用
日本図書コード管理センターを通じて個人でISBNを取得する場合の費用は、2024年7月以降、以下のように改定されています。
項目 | 金額(税込) |
出版者登録料(初回のみ) | 11,000円 |
ISBNコード10件分セット | 17,600円(1冊あたり約1,760円) |
出版者記号・書名記号の登録更新料(5年ごと) | 6,600円 |
1冊のみの出版でも、最低で約28,600円(登録料+10件分ISBN)が必要です。これは、ISBNが「10件単位」でしか販売されていないためです。
費用対効果を考慮し、将来的に複数冊の出版を検討している場合は、事前にまとめて取得しておくことが賢明です。
電子書籍にもISBNは必要か?
紙の書籍にISBNを付与するのは一般的ですが、Kindleをはじめとする電子書籍では、ISBNの登録は必須ではありません。Amazon Kindleでは、独自の識別番号(ASIN)で管理されているため、ISBNを登録しなくても出版・販売が可能です。
JANコードとの違いと関係性
ISBN(国際標準図書番号)は、書籍ごとに付与される識別コードで、出版・流通・管理のために用いられます。これに対応する形で、書籍の裏表紙などにはISBNコードと、書籍JANコード(2段のバーコード)が印刷されます。
一方で、JANコード(商品識別コード)は一般的な商品に使われるバーコードで、書籍JANコードとは運用が異なります。
書店や流通の現場では、書籍JANコードを読み取って管理しており、書籍JANコードの表示率は、新刊でほぼ100%に達しています。
ISBN取得後に必要なこと
ISBNを取得した後は、次のような手続き・対応を忘れずに行いましょう。
- 書籍の奥付にISBNを明記
- 表紙・裏表紙に書籍JANコード(バーコード)を掲載
- 国立国会図書館への納本(義務)
- 納本制度により、出版物は国立国会図書館に2部送付する必要があります。
これらを怠ると、正式な出版物として認められない場合や、販売に支障をきたす可能性があるため、注意が必要です。
まとめ:ISBNは自費出版の信頼性と販売力を高める
ISBNコードは、書籍の「身分証明書」としての役割を果たし、作品の信頼性や販路の広がりを支える重要な要素です。流通・管理の利便性を高め、オンライン書店や実店舗での販売を可能にするだけでなく、著者としての発信力や説得力を一段と高めてくれます。
自費出版においても、ISBNの取得は長期的な視野で見れば非常に有益です。
出版の目的や流通形態に応じて適切に活用することで、あなたの書籍はより多くの読者へと届く可能性を持つでしょう。
出版に関する知識や手続きに不安がある方には、専門的なサポートの利用も有効です。
労働教育センターは、創業50年以上の信頼と実績を持つ出版社として、労働組合の記念誌や教育関連書籍、オリジナルカレンダーの制作など、数多くの出版実績を積み重ねてまいりました。著者の思いを大切にし、企画・編集からデザイン・印刷・流通までを一貫してトータルで対応。商業出版では難しい専門的なテーマや自由な表現も、弊社の自費出版サポートなら実現可能です。
また、ISBNコードの取得代行も承っておりますので、はじめての方でも安心して出版に取り組んでいただけます。コストを抑えつつも高品質な出版を目指し、理想の一冊を形にするお手伝いをいたします。
自費出版をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
